意外かもしれませんが、「部下を呼び捨てにする」という文化は、ホワイト企業と呼ばれる大企業でもまだまだ根強く残っています。
もちろん、私の経験は限られていて、見てきたのは大企業2社と中小企業3社ほど。それでも、一定の傾向は見えてくるものがあります。
大企業に残る「年功序列的」な呼び方
大企業で呼び捨て文化が残る背景には、「人材の流動性の低さ」や「年下が上司になることへの抵抗感」があるように感じます。
かつて私が勤めていた企業では、離職率が高かったこともあり、年齢や役職にかかわらず「○○さん」と呼ぶのが当たり前でした。30年前の話ではありますが、その文化が心地よく、私には合っていました。
年下上司をどう呼ぶか問題
最近では、年齢と役職の逆転も増えてきました。とはいえ、文化や風土はそう簡単には変わりません。年上の部下をどう呼ぶか、年下の上司をどう呼ぶか――戸惑いが現場にはあります。
たとえば、以前いた組織では「○○さん」と呼ぶのが主流だったのに、今では「○○課長」「○○部長」と役職で呼ぶように変わってきました。年下に「さん」付けするのが嫌、という心理が働いているのでしょう。
不思議なことに、面と向かっては「○○部長」、その人がいないところでは「○○君」と呼び方を変える人もいます。個人的には、こうした曖昧なスタイルを反面教師にしています。
私が出会った「スタイルを持った上司」
思い返せば、前職の若い上司(当時30歳前後)に、強く影響を受けました。彼は私を含め、誰に対しても「○○さん」と呼ぶ人でした。叱るときですらそのスタイルを崩さない。そこに一本筋の通った美学を感じました。
プログラマの世界では、少し砕けた言動や自由な文化が許容されがちですが、彼は「納品するものには一切の妥協なし」という方針で、スーツを着てきちんとした姿勢を貫いていました。
単なる堅物ではなく、驕ってくれるような気遣いもあり、人として信頼できる、まさに「漢気」のある人物。中小企業でこうした人に出会えたのは、今でも私の財産です。
呼び方は「ハラスメント」ではない。でも、その人のスタイルが出る
人の呼び方に正解はありません。でも、私は「○○さん」と呼ぶスタイルを貫きたいと思っています。
よく、「命令には呼び捨てがいい」とか、「部下に威厳を示すには名前で呼び捨てが必要」といった意見もあります。でもそれは昭和の話。今の時代には合わないし、共感も生みにくい。
また、「命令に従うだけの部下」であればそのスタイルでもいいでしょう。
でも、今は「部下に意見を出してほしい」時代です。
そんな中でいつまでも「上位下達」を意識せざるを得ないスタイルを貫くのはナンセンスでしょう。
服装と同じように、「人をどう呼ぶか」は、その人の「スタイル」や「美意識」が表れる部分。だからこそ、誰かが教えてくれるものではなく、自分で選びとるものだと思うのです。
最後に:変わらない組織文化を変えるのは、あなたのスタイルから
組織には、同期意識や先輩後輩文化といった“見えないルール”が根強くあります。その一方で、年齢逆転や転職の一般化により、今までの慣習が通用しなくなってきているのも事実です。
「○○さん」と部下を呼ぶ。それだけで、組織の空気は変わります。
「オラオラ系」の呼び方ではなく、誰に対しても敬意を持つスタイルを。共感と信頼を生む働き方は、そうした小さな積み重ねから生まれると、私は思っています。
コメント