【「本質は?」と言いすぎると、会議が止まる理由】
~論点思考で、組織の思考停止を回避する~
■「本質」という言葉に注意しよう
会議や打ち合わせの中で、
「結局、本質は売上ですよね?」
「この失敗の本質ってなんだろう?」
といったフレーズを聞いたことはありませんか?
確かに「本質」という言葉はカッコよく、知的な響きがあります。
つい使いたくなる気持ちもよく分かります。
ただしこの言葉、扱いを間違えると組織の思考を止めてしまう危険なワードでもあるのです。
■「本質」は思考を深める言葉か?止める言葉か?
「本質」とは、もともと余分な要素を削ぎ落とし、物事の中核を見つめる概念です。
それ自体は悪いことではありません。
しかし、会議の中で「本質は?」と問いかけた途端、空気が一気に止まる場面に出くわしたことはないでしょうか?
特に、経営層や上司が「本質を見よう」と言い出すと、
- 参加者が黙る
- 誰も意見を出さなくなる
- 「社長の“本質”の意味って何だろう?」と議論が迷走
まるで禅問答のような時間が流れ始めてしまいます。
■「本質は?」よりも「論点は何か?」
そもそも、「本質は?」と問われると、聞かれた側は「正解を出さなきゃ」と構えてしまいます。
でも、正解なんて存在しないのがビジネスの現場です。
実際に求められているのは、「論点は何かを整理せよ」というメッセージです。
もっと具体的に言えば:
- 「何が問題の本丸か?」
- 「焦点をどこに定めるべきか?」
- 「何から優先的に議論すべきか?」
つまり、論点ベースの思考に切り替えることが重要なのです。
■論点が見えると、解決策の精度が上がる
たとえば、「売上が目標未達成」という事実があったとします。
そこで「トップ顧客を増やそう」と即対策に走るのではなく、
- そもそも計画の設定は妥当だったのか?
- 達成度に部門間で差があるのはなぜか?
- 顧客構成や営業プロセスに偏りはないか?
といったように、“背景にある構造的な論点”を掘り下げることが、正しいアクションに導いてくれます。
■なぜ論点整理が組織に必要なのか?
理由はシンプルです。
組織で動く以上、「考え方の共有」が不可欠だからです。
企業の意思決定は、通常以下のような3層構造で進みます:
- 経営トップ
- 管理職
- 一般社員
この伝達の過程で、「行動指針」や「考え方」がズレてしまうと、対策の実行段階でブレが生じます。
その結果、思ったような成果が出なかったり、現場で混乱が起きたりするのです。
■「現場に権限移譲」するためにも論点思考を
権限移譲がうまくいかない組織の多くが、**上流の「考え方のズレ」**に起因しています。
「なぜこのアクションなのか?」という意図や前提が共有されていないと、現場は単なる“命令の受け手”になります。
論点を明確にするというのは、結果に対して「なぜ?」を繰り返し、上流構造を解き明かしていくプロセスです。
このプロセスがあることで、現場でも自律的に判断ができるようになります。
■まとめ:「本質」ではなく「論点」で前に進もう
「本質は?」という言葉は、気をつけないと会話を停止させるトリガーになりがちです。
それよりも、「論点は何か?」を明確にし、思考を前に進める方が、組織にとってはずっと建設的です。
論点を軸に考える習慣があれば、
- 意思決定の精度が上がる
- 現場の理解と納得が深まる
- 組織全体の連携がスムーズになる
「本質」という言葉に頼る前に、まずは「論点を見極める力」を組織に根づかせましょう。
※ご相談・ご質問はお気軽にどうぞ。
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