製造業の経営を考えるとき、多くの人はこう言います。
売上=単価 × 数量 × リピート数
もちろん正しいです。
しかし――
こと製造業において、本当に経営を左右するのは「コスト」です。
今回は、ものづくり企業にとって欠かせない「原価管理」と「製造コスト削減」の本質について解説します。
売上よりも難しい「原価コントロール」
製造業の利益は、次の式で決まります。
利益 = 売上 − 原価
売上は営業努力で伸ばせます。
しかし、原価は放っておくとじわじわ膨らみます。
特に中小製造業で見落とされがちなのが、次のような“見えないコスト”です。
- 製造ミスによる再加工費
- 不良品の廃棄コスト
- 手戻り作業
- 過剰品質
- 現場のムダな動線
- 属人化による作業ばらつき
これらは決算書には「失敗」とは書かれません。
しかし確実に利益を削っています。
原価管理の基本:材料費だけ見ていては不十分
「原価管理」というと、多くの企業がまず仕入価格を見直します。
もちろん重要です。
- 材料単価の見直し
- 仕入先の変更
- ロットの最適化
しかし、製造業の原価はそれだけではありません。
原価の3要素
- 材料費
- 労務費
- 製造間接費
特に問題になるのは、製造の失敗コストとムダです。
- 1回で決まらない段取り
- 設計が甘く量産で品質が安定しない
- 現場での微調整頼みの製造
これらは、実は設計段階で決まっていることも少なくありません。
設計変更がコストを下げる理由
ものづくりにおいて重要なのは、
コストは「設計」で8割決まる
という考え方です。
設計を変えることで、
- 加工工程を減らせる
- 精度要求を適正化できる
- 治具が不要になる
- 組立工数が減る
- 不良率が下がる
結果として、
「ムダなコスト」がそもそも発生しなくなる
のです。
現場改善も重要ですが、
設計改善はそれ以上にインパクトがあります。
量産品質という視点
試作では問題がなくても、量産で崩れる。
これは多くの製造業で起こります。
なぜか?
- 公差設計が厳しすぎる
- 加工前提が理想条件
- 作業者の熟練度に依存している
量産品質を上げるということは、
「誰がやっても同じ品質になる設計」
にすることです。
これができれば、
- 不良率低下
- 段取り時間短縮
- 作業標準化
- 教育コスト削減
につながります。
つまり、品質向上=コスト削減なのです。
製造業のコスト削減は“攻めの経営”
コスト削減というと「守り」に聞こえます。
しかし実際は違います。
原価が下がれば、
- 価格競争に耐えられる
- 利益率が改善する
- 設備投資に回せる
- 人材に投資できる
つまり、攻めの経営の土台になります。
売上を追いかける前に、
まずは「漏れている利益」を止める。
これが、ものづくり経営の基本です。
まとめ:製造業は「売上」よりも「原価管理」
売上は
単価 × 数 × リピート数
しかし利益は
売上 − 原価
製造業においては、
- 原価管理の仕組み化
- 製造のムダの可視化
- 設計段階でのコスト意識
- 量産品質の安定化
が極めて重要です。
売上を伸ばす前に、
まず「漏れている利益」を止める。
これこそが、
持続的に強いものづくり企業への第一歩です。

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