製造業ではよく「多能工化が必要だ」と言われます。
しかし実際には、思ったほど進まない会社も多いのではないでしょうか。
- 特定の人しかできない作業がある
- 休むとラインが止まる
こうした問題の背景には、
多能工化が自然には進まないという組織の特性があります。
今回は製造業における多能工化について整理してみます。
多能工化は意識しないと進まない。
多能工化は、放っておくと進みません。
理由はシンプルです。
人も組織も変化を好まないからです。
「人」は
- 変化を嫌がる
- 得意な仕事を続けたがる
- 苦手な仕事は避けたがる
という傾向があります。
「組織」も不足している部分を埋めることには反応しますが、
「回す仕組み」を作ることには意識が向きにくいという特徴があります。
組織が大きくなると「部門の壁」も出てきます。
有能な人材は手放せませんよね。
そのため多能工化は意識して進めないと自然には広がらないのです。
多能工化は標準化と技術継承を進める
多能工化を進めると、別の変化が起こります。
それは
- 作業の標準化
- 技術の見える化
- 技術継承
です。
一人しかできない仕事は
- 作業手順が暗黙知になりやすい
- 改善が進みにくい
という問題があります。
しかし多能工化を進めると
- 手順を整理する
- 教える仕組みを作る
- 作業を標準化する
必要が出てきます。
当然コミュニケーションも活発化します。
つまり多能工化は、標準化と技術継承をいやでも進める仕組みになると言えます。
タテの多能工化
多能工化にはいくつかの方向があります。
一つは タテの多能工化です。
これは「前工程と後工程」を理解することです。
例えば前工程を担当している人が、後工程の作業を理解すると
「この加工は後工程で困るかもしれない」
といった視点が生まれます。
在庫削減にも効く視点です。
さらに
より上の工程
より後の工程
も意識するようになります。
こうした視点は工程だけでなく
「売れるものを作るという」ビジネス全体の改善にもつながっていきます。
ヨコの多能工化
もう一つは ヨコの多能工化です。
これは別の分野や資格を学ぶことです。
資格を取得すると「社会の共通言語」が理解できるようになります。
例えば
- 図面の考え方
- 品質管理の考え方
- 安全管理の考え方
などです。
こうした知識は現場の視野を広げることにつながります。
私の経験上
「タテに深く知識を掘り下げる」ことも大事ですが
会社人生の後半になればなるほど
「ヨコに広げる」意識がないと人の成長は止まりやすいものです。
特に会社員の「後半戦」にはこの考え方が大事だと私は考えています。
結果として「自分の工程だけを見る」のではなく、工場全体を見る視点が生まれます。
多能工化しないとどうなるか
もし多能工化が進まないと、どうなるでしょうか。
よくあるのが「その人がいないと回らない」という状態です。
- 特定の人しかできない作業
- 休むと止まるライン
これは工場運営として大きなリスクです。
また技術改善の面でも問題があります。
同じ人だけが作業していると
「第三者的な視点での改善が生まれにくい」からです。
さらに
- 休めない職場になる
- 人材育成が進まない
- 技術が閉じる
という状態にもなります。
野球で言えば「ピッチャーの交代がいない状態」に近いかもしれません。
さらに長期的には
会社の「ガラパゴス化」が進む可能性もあります。
外の世界と接点が少なくなり、
改善のスピードが落ちてしまうのです。
多能工化は工場改善の基盤
多能工化は単なる人材育成ではありません。
- 標準化
- 技術継承
- 工程改善
こうした工場改善の土台になります。
重要なのは
自然に進むのを待つのではなく、意識して仕組みとして作ること
です。
そうすることで
- 技術が共有され
- 改善が進み
- 組織が強くなる
という流れが生まれてきます。
30年以上の製造業経験と現場視点から
工場改善や補助金活用についてご相談をお受けしています。



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