社長のための経営改善講座|連載第1回

経営コラム

原価率を下げるには?中小企業の原価改善を妨げる4つの問題

原価率を下げるために、材料費を見直す。仕入先と価格交渉をする。無駄な経費を削減する。こうした方法は、多くの経営者が知っています。
それでも、原価改善がなかなか進まない会社があります。
なぜでしょうか。

改善方法を知らないからとは限りません。
問題に気づいていても、改善につなげる仕組みが整っていないことがあるのです。

例えば、作業に時間がかかっていても、その時間を記録していない。
記録を取っていても、振り返る機会がない。
改善しようとしても、特定の社員しかできない仕事があり、簡単には変えられない。

こうした問題が重なると、原価改善は掛け声だけで終わってしまいます。
今回は、原価改善を妨げる4つの問題を考えます。

1.「時間」を経営資源として捉えていない

原価を考えるとき、材料費や外注費には目が向きます。
一方で、作業に費やす時間はどうでしょうか。
例えば、段取り替えに時間がかかる、確認作業が何度も発生する、不良品の手直しに追われる。
こうした問題があっても
現場では「仕方がない」「いつものこと」として処理されてしまうことがあります。
時には「うまく対応できること」が「仕事の基本」化していきます。

しかし、時間も貴重な経営資源です。
仮にある作業で毎日30分の手直しが発生しているとします。
年間240日稼働するなら、年間120時間です。
これは「仕様の再確認」「期限の再確認」といった小さくみえる作業も意外と含まれてくるものです。
例えばですが
「期限を把握して作業する」ことと「期限を誤って作業する」ことの生産性の差は大きいですよね?
1つの作業だけなら小さく見えても、同じような問題が複数の工程、複数の人間で起きていたらどうでしょうか。
その時間は、本来なら付加価値を生む仕事に使えたかもしれません。
材料費の削減だけでなく、時間をどこで失っているかを把握すること。
これも原価改善の重要な出発点です。

2.現場の状況を記録していない

時間を経営資源として捉えていても、実際にどこで時間を失っているかが分からなければ、改善にはつながりません。

「この作業は時間がかかる」
「最近、不良が増えている気がする」
「特定の担当者に仕事が集中している」

現場で働く人は、こうした問題に気づいていることがあります。
しかし、感覚だけでは、どの作業を優先して改善すべきか判断しにくいものです。
例えば、手直しが多いという問題があったとします。
発生した件数だけでなく、手直しにかかった時間や発生原因まで記録すれば、影響の大きい問題が見えてくるかもしれません。

もちろん、すべての作業を細かく記録する必要はありません。記録すること自体が負担になれば、本来の仕事を圧迫してしまいます。
記録を自動化するシステムを導入もあり得ますが、すべてに対応するより、「ここだろう」という「推測」によりポイントを押さえて導入しないと「入れただけ」に終わりがちです。
まずは、改善したい作業を一つ選び、必要な情報を記録することから始めましょう。

時には、社員の歩数や歩くスピード、打合せ時間を計測することもあります。
記録の目的は、社員を監視することではありません。
改善すべき問題を見つけることです。

3.記録を振り返り、対策を考える時間がない

記録を取っていても、それを見返さなければ改善にはつながりません。
日々の業務に追われ、記録が集計されないままになっている会社もあるでしょう。
改善を進めるには、記録をもとに原因を考え、対策を決め、実施した結果を確認する時間が必要です。

例えば、次のような流れです。

  • 週次: 作業時間や不良の状況を確認し、すぐに対応できる問題を洗い出す。
  • 月次: 数字の推移を見て、繰り返し発生している問題や改善の優先順位を考える。
  • 対策後: 実施前後の数字を比較し、効果があったかを確認する。

重要なのは、会議を増やすことではありません。
短時間でも定期的に数字を振り返り、次の行動を決める機会をつくることです。

改善策を実施して終わりにせず、結果を確認して次の対策につなげる。
これを繰り返すことで、改善が一時的な取り組みで終わりにくくなります。

4.「できる人が○○さんしかいない」が常態化している

特定の社員しかできない仕事があると、その人に仕事が集中します。
熟練者がいること自体は、会社にとって強みです。
しかし、その人がいなければ仕事が進まない状態は、経営上のリスクでもあります。

例えば、段取り替えを特定の社員しかできない場合、その社員の作業が終わるまで次の仕事を始められないことがあります。
ほかの社員が対応できれば短縮できる待ち時間も、技能が一人に集中しているために発生してしまいます。

また、熟練者が忙しすぎると、後輩に教える時間も取れません。
結果として属人化が続き、改善も進まなくなります。

こうした問題を解消するには、作業手順を整理するだけでなく、複数の社員が実際に作業できるように育成する必要があります。
これは、キャリアパスや処遇を整えることにもつながります。

もちろん、すべての仕事を誰でもできるようにする必要はありません。
高度な技能を持つ人の専門性を生かしながら、日常的に発生する業務や重要工程について、対応できる人を増やしていくことが大切です。

「できる人がいる」ことと、「誰かが休んでも仕事が回る」ことは違います。
まずは、特定の人しかできない仕事を洗い出し、代わりに対応できる人を育てることから始めましょう。
これからの採用には、「休める体制づくり」も非常に大事な訴求ポイントです。

原価改善は、現場への呼びかけだけでは進まない

原価改善を妨げる問題を整理すると、次の4つになります。

  1. 時間を経営資源として捉えていない。
  2. 改善に必要な記録を取っていない。
  3. 記録を振り返り、対策を考える時間を確保していない。
  4. 特定の人に仕事が集中し、改善や技能の共有が進まない。

この状態で、社員に「もっと効率よく働こう」「無駄を減らそう」と呼びかけても、具体的な改善につながるとは限りません。

必要なのは、社員の意識だけに頼るのではなく、時間を把握し、記録し、定期的に振り返り、誰か一人に依存しない仕事の進め方を整えることです。

すべてを一度に変える必要はありません。
まずは、自社で繰り返し発生している手直しや、特定の社員しかできない作業を一つ選んでみてください。その作業にどれだけの時間がかかっているのかを記録し、週次や月次で振り返る。そして、改善策を実施して効果を確認する。

大企業は人材が豊富な点、このような仕組みが整いやすい傾向はあります。
一方で、中小企業ではなかなかこの「余力」を生み出しにくいのが現実です。
しかし、「形式ばらず」に「小回り」が利く良さもあります。
組織が大きくなると、一度はじめたものは「なかなかやめずらい」「形骸化」というデメリットもありますから。

小さな取り組みでも、原因を把握し、対策を実施し、効果を確認する習慣ができれば、改善の進め方は変わっていきます。
原価改善を進めたいものの、どこから手をつけるべきか分からない場合は、まず自社の課題を整理してみましょう。
原価改善の第一歩は、コストを削ることではありません。利益を失っている原因を把握し、改善を続けられる仕組みをつくることです。

原価・人手不足・業務の属人化など、自社の経営課題を整理するための簡易経営診断をご利用いただけます。

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